富永華苗

Tominaga Kanae

私が家へ転がりこんだとき、そこは知らない場所であった
When I fall into the house, it was an unknown place

思考は空気が薄くなった地下で停止する(していた)
The mind stopped at underground with thin air

それが炎に包まれている時、私は次の場所へ向かう
While that is bursting in flames, I will move to next

人生の繰り返し、この線をこえようとしなくても
It is a repetition of life, even you do not try to go over the line

思考は空気が薄くなった地下で停止する
The mind stops at underground with thin air

“ 正”の従順な出現
It is right, and nobody can caught it

紙|リトグラフ、木版
Paper | Lithograph, woodcut
H950 × W750mm ×6点

作者より

言葉に対するズレ、歴史に対するズレ、様々なズレの中から自分はどこに属せるのか。
確固としたものを求め行き来をしていたら、イメージが構築され壊され元の意味から離れていきました。この表と裏全てが折り込まれ境界線がなくなったイメージたちは、版を通して紙に現れます。それは客観的に私の問いに答えをくれました。
まだそれを正直に飲み込むことはできません。でも、ちゃんとこのズレと向き合おうと思えました。

富永華苗

担当教員より

自身のアイデンティティを率直に表現しようとした現実感が、観る者に強い説得力を持って伝わる秀作である。いわゆる印刷媒体としてのリトグラフの性質を存分に活かし、その軽やかさを逆手に取ることによって、不確かな社会や人の存在についての問いかけを冷静に淡々と画面に忍ばせている。つまり、イメージの基はきわめて個人的なものでありながら、現代社会との関わりを提示する美術の潜在力を備えているのである。拠って、版画はそもそも市井のものであり、そうした認識からのアプローチが未だに同時代性を持っていることを明示する好例としてこの作品を高く評価した。

油絵学科教授 遠藤竜太