松尾華子

MATSUO Hanako

切り取ることにより、あるいはまるで切り取るかのようにして
By cutting it or as if by cutting it

紙、インク|リトグラフ
Paper, ink | Lithograph
H425 × W485mm
H830 × W1030mm
H815 × W1000mm
H595 × W635mm
H480 × W595mm
H785 × W990mm
H660 × W620mm
H385 × W485mm
H980 × W810mm

作者より

ある時、自分が無意識に切り取ってものを見ていたことに気づいた。ふと見かける植物や風景の影形を軽率に切り取り、ドローイングをしていた。私はそれにハサミを入れてみた。描く、切り取るを繰り返すうちに、バラバラだったイメージたちが重なっていく。そして一枚の紙へと戻る。切り取ることにより、あるいは切り取るかのようにして描くことで、見える形を表現したいと思った。私は切り取ることにより、私の見ているものを確かめ、向き合うのだ。

松尾華子

担当教員より

抑制された色彩と造形的推敲を重ねて作り出されるイリュージョンが魅力的な作品である。版画制作の備える編集的な性質によって、独特なコラージュ技法から出現した植物や風景のイメージを、さらに直截な造形へと洗練していった。そして、緻密に計算された地と図の構成とも相まって、見事なまでの明快さで力強く斬新な空間表現へと昇華した。徹底的に模索して辿り着いたこの松尾独自の表現は、生き生きとして同時代的でありながら、どこか日本の伝統的な空間認識とも繋がり、まさに秀逸である。

油絵学科教授 遠藤竜太