田中千里

TANAKA Chisato

都市のリズム
City Rhythm

紙、インク、リトグラフ
H3330 × W7350mm

作者より

私にとって版画の機能は1枚の絵をたくさん増やすことです。ビル群を繰り返すパターンとして描き、刷り、繋げてどこまでも広がる都市の風景画をつくりたいと思いました。
版画の印刷工程と都市の風景は同じリズムを刻んでいるように見えます。
規則的に繰り返す都市のイメージの中で、手作業からくる刷りムラの色の違いと貼り合わせの形のズレが不規則的な豊かさを作ってくれたことをうれしく思います。

田中千里

担当教員より

版画の最大の特性は、同じものが何枚も刷れることである。田中は、この複製性を積極的に活用し、都市を描いた画像を壁紙のようにパターン化することで、均質なイメージに覆い尽くされる大型の作品を制作した。中心部には、クローズアップした画像が配置され、相互の関係性についての解釈を求める仕掛けが施されている。そこから導き出される答えは、現代社会への批判とも、あるいは単なる視覚的な遊びとも言うことができるだろう。理知的に洗練された幾何学的形態と色彩によって軽やかなリズムとスケールの広がりを生み、多様な解釈を可能としうる表現に到達した。これは、複製された膨大な情報に囲まれている同時代的感性に静かに響いてくる秀作だと思う。

油絵学科教授 遠藤竜太