大寺史紗

Ohtera Misa

生まれ落ちる
be born

雲肌麻紙、墨、胡粉、インク
Kumohada washi, ink, chalk
H2350 × W1905mm

作者より

この世に生を受けることを「生まれ落ちる」というが、人間は生まれた瞬間が最も無垢な状態であり、年月を重ねる度に汚れていくものである。「落ちる」という言葉の中に 音や光のない、えもいわれぬ恐怖を感じる。それでも尚生きていく意味とは何か、描きながら自らに問い、地を這う様に生き続ける執念を表現したかった。

大寺史紗

担当教員より

女性とも男性とも見分けのつかない人形のような顔立ち、片方の瞳はこちらをじっと凝視している。体の一部とも思える異形なフォルムはリズミカルに躍動をしながら生を産み、それらは美しい線描で描かれている。中央の赤児の手は薔薇の根を持ち、これから始まる生の祝祭を予感させる。作品は日本画のクラシックな技法である線描や隈取りを用いた墨による表現であり、丹念に何度も墨を重ねることでモノクロームの色相が増し、墨色は豊饒なる色彩の海へと変容する。狂おしいまでに生きることへの希求を、この作品は私たちに問いかけている。

日本画学科教授 内田あぐり