安村真澄

Yasumura Masumi

夢幻
mugen

高知麻紙、岩絵具、水干
Kochi mashi hemp paper, mineral pigments, dyed mud pigment
H2730 × W1820mm

作者より

見たいのに、もう見えない。行ったことがあるはずなのに、もう行くことはできない。
小さな頃でしか感じることができなくて、とても強烈な記憶のはずなのに大人になると忘れてしまう。
出会うことができるのは一瞬だけど、今もどこか知らない場所で、永遠に在り続ける世界。

本当にその時間が在ったのか曖昧になってしまうような儚さをもつ祭りから、わたしを通り過ぎていったある一瞬の時間を描きました。

安村真澄

担当教員より

画面からあふれる熱気、暖かな色彩で描き出された賑わいや華やぎ。作者自身の言葉によれば「ある時期やある年代でしか感じることができなくて、とても強烈な記憶のはずなのに、大人になると忘れてしまう。切ないような儚いような一瞬の世界」を描きたかったという。
作者が表現しようとしているものは、心の中に有り、行きたいのにもう行くことのできない場所である。作者が今までに出会った祭りの楽しい想い出があふれて、画面からは祭り囃子の音までが聞こえてきそうである。作者の心に浮かんだ想い出をもとに、祭りの様々な形態やエネルギーを画面に再構築し描ききった。熱気を感じさせる秀作である。

日本画学科教授 三浦耐子