濵田千晴

Hamada Chiharu

蛙が時間軸にのまれるのはエンドレスに海が井であることを知る為
The reason the frog is caught up in time axis to see well the see is well endlessly.

雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、墨、布、色鉛筆
Kumohada mashi hemp paper, mineral pigments, dyed mud pigments, ink, cloth, colored pencil
H600 × W2440mm × 3点

ペラペラで明確な月
The thin and articulate moon.

月が“月”になる
A moon becomes the moon.

“月”と“月”が出くわす
The moon runs into the moon.

作者より

一人の人間が興味を持った対象を認識する過程を表した。対象を画面上では月に置き換えた。右から左に流れる時間軸の中で主人公は月との距離を縮めようとする。遠くから見ると美しい対象は近づくにつれ様々な表情をみせる。やがてそれらの経験は対象に対する一つの認識を主人公に与える。ただその認識は主人公の思い込みに過ぎなかったのか、すぐに対象に対する理解は揺らぐ。主人公は改めて月を認識すべく初めに戻る。その時対象はより具体的になる。それにより、対象に向かう過程も以前とは違ったものになる。

濵田千晴

担当教員より

作品は横長の絵巻物様式で描かれているが三部作で構成されている。右から左へと流れる時間軸と情景に連続して現れる文字や人間のフォルム、吹抜屋台的構図は、絵巻に見られる独自の絵画様式であり、それらが現代の瑞々しい表現へと展開をしている。
濵田は学部4年間かけて人間表現を追求してきた学生である。作品に描かれた人体は彼女の4年間の結集であり、美しくデフォルメされた無数の人間像がいる。自身の憧れの何かを表現するために月を隠喩としているが、「憧れに近づくと一瞬で手からそれがこぼれ落ちる」、と作者の言葉にあるように、画面は詩的である。
心に湧き上がるイメージを造形として紡ぎ出すことで、現代の不条理な世界観を人間像とともに描いた秀作である。

日本画学科教授 内田あぐり