若林沙奈映

Wakabayashi Sanae

ぎゅっと
firm

雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、色鉛筆
Kumohada mashi hemp paper, ineral pigments, dyed mud pigments, colored pencils
H1303 × W970mm

さんまん
vague

雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、色鉛筆
Kumohada mashi hemp paper, ineral pigments, dyed mud pigments, colored pencils
H1303 × W970mm

作者より

「ぎゅっと」、「さんまん」は対の作品だ。
モデルは私の父と母。二人の部屋やそこにある物達を切り取り、彼らの生活感も込みで私の中にある父、母の存在感を画面に込めようと思い制作した。

若林沙奈映

担当教員より

この若林沙奈映の描く2点で対の父母の肖像画は、単に描かれる者の生気、ましてや魂を捉え様としたものではない。魚眼レンズで覗き込んだかの様な、ピンクや黄緑という派手な色調で描かれる生活感生々しい家財に囲まれた父母。父は青い顔をし煙草をふかしながら何処かを見、母は頬杖をつきながら此方に視線を向ける。まるで生気なく張子の様にそこへ魂は全く感じられない。
描く彼女と描かれた父と母。この三者の集合体を通して見える「家族」というテーマ。家族其々の人生は絶えず変化をしていて、いつも新しい展開に適応してゆかねばならない。その変わりゆく家族の間の中で、冷静でありながら込める彼女の父母への愛慕の感覚。この対の作品が、現代社会が抱える「家族」の“絆”という宿命的な問題、その核心的なアイコンとなっていることに我々は気が付かされるのではないだろうか。

日本画学科准教授 岩田壮平