有木陽美

ARIKI Minami

Yellow Line

糸|メリヤス編み
Thread | Knitting
立体|H500 × W500 × D150mm、他21点
パネル|H841 × W594mm ×5点
本|H257 × W182mm(35ページ)

作者より

なぜ多くの軍手は白く、手首のステッチは黄色いのか。なんでもないように見えて独特なビジュアルだと思った。軍手はアクシデントから身を守る役割を持ち、身に着けることによる怪我や危険の微かな予感は誰もが持つ身体の記憶から来るものである。軍手のような下着は一体どんな危険を予感するだろうか。軍手のユニフォームを着た野球少年はどんな気持ちでプレーするだろうか。
いずれにせよ展開の可能性に際限はなく、日常には目を見張るべきものがまだまだ潜在していると気付かされた。見慣れているようで見たことのない白と黄色の景色に、微かな差異により生み出せる異世界への扉が開いたような気がしている。

有木陽美

担当教員より

軍手の「黄色い線」に着想を得たプロジェクトである。粗い糸で編まれたざっくりとした質感と、そのエッジに施される黄色い線。「軍手」という手袋は、この特徴によって独特のアイデンティティを持っている。この性質を抽出し、衣服に適用してみることで、これまでにない角度から、衣類の魅力を描き出している。制作したのはベーシックなインナー、タートルネックのセーター、野球のユニフォーム、ベビー用品などであったが、洗練されたファッションアイテムへの展開をも想起させる力を持っており、デザインの視点として優れた提案である。

基礎デザイン学科教授 原研哉