黒瀧舞衣

KUROTAKI Mai

衣に依る
Koromoniyoru

樟|木彫、寄木造り
Camphor tree | Wood carving, yosegi-zukuri
H2650 × W750 × D750mm

作者より

人のようで人ではない、衣のようで衣ではない、柱のようで柱ではない、岩窟のようで岩窟ではない…等の幾多のイメージの重なりは「何かのようで、何者でも無い像」つまり「アノニマスな像」を生み出します。その像は、木彫の伝統的な技法のひとつである寄木造りを用いる事で、空間的に異次元に存在するものを同時に知覚し、繋げる役割を持ちます。

黒瀧舞衣

担当教員より

ベールの深い襞から鼻の輪郭だけを顕す頭部。長い髪と衣が覆うぼんやりした身体。流体のような左手を腿に添えて引き延ばされた下肢は、膝から下の素早いうねりの先に、粘性のある足を象っている。攪乱するように輪切りにされた上体の断続の中で、左手だけがやたら露わである。頭頂の背後で鋭く直立するオーラは、人々を誘き寄せる稜威(いつ)を纏う。
洗練されることのない神秘の依り代として、その都度達成されるものがここにある。身寄りのない崇高な夢想を励起する力が、鑑賞者の眼差しを隷属させるだろう。

彫刻学科教授 黒川弘毅