上野聖人

UENO Kiyoto

Neuter (rs)

Neuter (ub)

樟木、岩絵具、膠、鉄
H2020 × W660 × D920mm、H2010 × W640 × D920mm

作者より

主観と客観の錯綜により、人の装飾は変化し、それが「形」として精製される。イメージを可視化する為に、木を彫り、着彩(着衣)を施した。
中性的な人とは一体何だろうか。

上野聖人

担当教員より

ピーキーなチューニング——彫刻、人物、(見られる)モノ、木彫、エトセトラ。全ての要素をギリギリのところで釣り合わせたことから、作品は不穏な緊張感を纏い始めた——これは上野聖人の野心の実体化である。性別というイメージへの疑義。それを撹拌し、問う為のツール=外装としてのファッション。この二つを表現として縫い合わせ、デコンストラクションすることから表現を始める。その為に選択した方法が木彫であり人体彫刻であったことに、上野の抱える矛盾とアドバンテージがある。
量感のある写実的な頭頸部に、幾何学的で半ば型紙化した体幹、体肢を強引に繋げている。最下部の金属製ユニットが曲者だ。台座でも足でもない。彫刻を立たせていると言うよりは動かしていると言えばよいか。アンバランスな人体が床から切り離されてスイスイと進む姿は、さながら映画『マーズ・アタック』に出てくる火星人が変装した「美女」のようだ。それがD・ジャッドやC・アンドレの如くグリッドに沿って展示された状況は、SFの古典的空間を目の当たりにしているようで、何故だかぎこちなく、おかしい。
本作は、モチーフであるファッションモデル/ショーへの上野の態度表明であり、セオリーから離れた人体彫刻の可能性である。このことが今後どのように誤読されていくか。作家の応答はここから始まる。

彫刻学科教授 冨井大裕