矢部もなみ

YABE Monami

Un cheval, seul, au loin


H1900 × W700 × D700mm、H1500 × W700 × D600mm、H1500 × W600 × D600mm、H1300 × W500 × D400mm、H750 × W750 × D500mm

作者より

チャイルドシートに乗せられた私。
遠くに馬がぽつんと。

チェーンソーを手に持つ私。
目の前に木がぽつん、ぽつんと。

恐ろしいほど大きな山々が私たちを囲んでいる。

Où allons-nous ?

矢部もなみ

担当教員より

矢部は幼少の頃、フランスで過ごした記憶が今回の作品のテーマになっている。それは立木の中に一頭の馬が佇んでいる場面だ。しかし、出現させるべき場は懐古的な感覚を再現したものでもなく、木と馬の姿と風景が一体化するトロンプ・ルイユ的世界感でもない事。そんなルールを決められたかどうかは定かではないが、正直難しいところに挑んだと思った。

まずはアトリエに直径60cm程の本人の背丈を超えるもの、同じくらいのもの、そして低いもの、高さの違う計3本の樟の丸太が立てられた。

矢部の朝は早い。朝5時に起床し、自宅周辺の里山を含んだルートを約4キロ走って、朝食。そして身支度し、大学のアトリエには8時には到着し制作する。そして集中力と体力の落ち始めた17時には帰路につく。早朝のランニングは高校時代陸上をやって以来のルーティンだ。繰り返す生活もいつも違う新たな体験として感じ、作品制作に還元出来たのではないのだろうか。アトリエの丸太も更に2本増え、配置や設えも変化し、12月頃には丹念に彫られた馬の姿と素材としての樟の存在も動きだした。時間は食ったが少しずつ良い関係を結び出した、もう大丈夫だろう、、、。

矢部は早朝のランニングで感じていたのだろう。里山の土や岩の感触、そして立木の中の光や空気を。そして、何より度々見た、あの飛行機雲をやっと掴む事が出来たのかもしれない。

移り変わる時間の中で綺麗な自然光を取り込み、静寂ではあるが確固たる存在を、今此処に見事に出現させていた。

彫刻学科教授 三沢厚彦