下瀬美沙希

Shimose Misaki

刹那
Moment

高知麻紙、岩絵具、水干絵具、墨、ガッシュ
Kochi mashi hemp paper, mineral pigments, dyed mud pigments, ink, gouache
H1940 × W1300mm

作者より

作品のモチーフは、江戸時代に陰間と呼ばれた男娼である。14~20歳くらいの役者を目指す美少年たちがアルバイト感覚で茶屋などで売春していたという時代に衝撃を受け、私の思うジェンダーを超えた美少年の理想像を、現代の新宿西口を夜景に描いた。

下瀬美沙希

担当教員より

障子の向こうには紅殻格子があり、眼下には高層ビルの夜景が広がる。少し古びた出窓に座るのは現代のヴィジュアル系ロッカーだろうか、頽廃的なムードを醸し出しながら、誰かを待っている。下瀬は江戸時代に流行した風俗、蔭間茶屋の美少年を、現代のヴィジュアル系に置き換えることで、過去と現在が混在する不思議な世界を描き出している。白い肌の人体は独自性があるとともに秀逸な表現であり、黒いストッキングにかすかに浮き出た足の静脈は、男性性をリアルに表している。画面左から差し出された手は作品を構成する意味でも大切な存在であり、この手があるかないかで作品の内容も全く違うものとなる。神秘的かつ頽廃的、そして若々しい美しさに満ち溢れている絵画世界である。

日本画学科教授 内田あぐり