矢矧杏以彌

Yahagi Aniya

線路沿いをほどく
−解体と高架化のダイナミズム−
Demolish along the Keio Line

さと紙、ボール紙、スチレンボード、ほか
Satogami, cardboard, styrene board, other
H300 × W3000 × D460mm H150 × W560 × D560mm

作者より

都市は、暴力的なまでに日々変化を続ける。時にその変化は、都市と建築、ひいては行政と市民の対立構造を生む。そんな都市の造り変わりの中に、ふと、ささやかな建築の可能性を感じた。京王線高架化のため、線路沿いに立ち並ぶ住宅や商店が徐々に取り壊され、歯抜けた姿へと変化しつつある街、明大前。これまで仮囲いの中で人目につかず行われてきた「建築の死」としての「解体」を可視化することで、都市の営みの下に活きる儚い建築が現れる。

矢矧杏以彌

担当教員より

道路拡張や高架化の計画により、建築が徐々に取り壊され、街が歯抜けとなっていく姿は、都心ではもはや日常的な風景のひとつと言って良い。そんなマイナスイメージの現実を、新たな仕掛けにより、プラスに転じさせようとする意欲的な提案である。ここで創り上げられたものは、建築消滅後も何らか継承されることを予感させる。架構は、一時利用を念頭に、基礎が不要となる構造計画を採用するなど、実現性が高い提案がなされている。

建築学科教授 小西泰孝