内藤礼の生へのまなざし ─豊島美術館《母型》を中心に─A Study of Rei Naito’s Perspectives on Life, Focusing on “Matrix” from the collection of Teshima Art Museum論文|62ページ(35,567字)
本研究では、内藤礼の代表作のひとつ豊島美術館《母型》における著者の鑑賞体験を執筆動機に、同作を中心に文献・作品資料調査、インタビュー調査から作家の思想や表現の必然性を見出す一考察を行った。その結果、活動初期から一貫して内藤の創造の起点には自身の生の肯定への欲求があるが、作為に対する慎重さから生じる作品は密やかであることが明らかになった。一方で創造を通じて他者の存在を感知していくにつれ、豊島美術館《母型》で明確になった生の内外の存在を広く内包する受容性が作品にも内藤自身にも徐々に備わってきたのである。 菅野悠
本研究は、本学を卒業後に繊細な作品群を生み出し続ける現代美術家・内藤礼を対象として、緻密な作品分析の上で、活動の初期から近年に至るまでの内藤の言説や、内藤に影響した思想や言説を丹念に調査、考察した。また、作家本人や展覧会を手掛けた学芸員へのインタビュー調査を実施して他では得がたい示唆を研究に反映し、内藤が重要なテーマとする「生」について代表作の一つである《母型》に至るまでの変遷の、新たな一解釈を提示した点を評価した。 芸術文化学科准教授 春原史寛
作者より
本研究では、内藤礼の代表作のひとつ豊島美術館《母型》における著者の鑑賞体験を執筆動機に、同作を中心に文献・作品資料調査、インタビュー調査から作家の思想や表現の必然性を見出す一考察を行った。その結果、活動初期から一貫して内藤の創造の起点には自身の生の肯定への欲求があるが、作為に対する慎重さから生じる作品は密やかであることが明らかになった。一方で創造を通じて他者の存在を感知していくにつれ、豊島美術館《母型》で明確になった生の内外の存在を広く内包する受容性が作品にも内藤自身にも徐々に備わってきたのである。
菅野悠
担当教員より
本研究は、本学を卒業後に繊細な作品群を生み出し続ける現代美術家・内藤礼を対象として、緻密な作品分析の上で、活動の初期から近年に至るまでの内藤の言説や、内藤に影響した思想や言説を丹念に調査、考察した。また、作家本人や展覧会を手掛けた学芸員へのインタビュー調査を実施して他では得がたい示唆を研究に反映し、内藤が重要なテーマとする「生」について代表作の一つである《母型》に至るまでの変遷の、新たな一解釈を提示した点を評価した。
芸術文化学科准教授 春原史寛