川口茜

KAWAGUCHI Akane

臆病者の行進
a march of a coward

高知麻紙、岩絵具、蛍光顔料、水干絵具
H1940 × W5880mm

作者より

心配性の私の通学かばんは、忘れ物がないように、万が一のために、たくさん物を詰め込むと出来上がる。足りないことで生まれる不安を隠すために。
さらに予備のマスクや夏の日傘も欠かせない。新たな病や気候変動に合わせて。
一般的にもブランド物で見栄を張ったり、厚底の靴を履いて身長を盛ったり、身につけるものがコンプレックスを隠す手段となり、加えて社会や環境に適応するための手段となる。身につけるものを描くことで心の内と現代の社会、両者が見えるのではないかという試みである。

川口茜

担当教員より

川口茜の長大な作品「臆病者の行進」は、一見しただけでは何が描かれているのか?俄かには理解しづらい図様である。しかし何かが突発的に起こっているのだということは、瞬時に感じる迫力がある。路上で躓き、よろめきながら斜めに倒れいく身体と背負っていたリュックやポケットから飛び散った財布やコイン等の様々なものがストップモーションの映像のように、横長画面上にばら撒かれ大胆に展開されている。
あえて強弱の表現を抑え気味にすることで、それぞれの物象に同等の平明性の輝きを与え、各細部へと魅力を引き寄せる描写に成功している秀作である。

日本画学科教授 西田俊英