羽生綺里子

HABU Kiriko

望遠
boen

建設現場
kensetsugemba

木製パネル、雲肌麻紙、膠、水干絵具、岩絵具、毛糸
H1818 × W2273mm、H1303 × W1940mm

作者より

本作は、色面の連なりを際立たせることで、風景を色彩構成として再解釈することを試みた作品である。画面には編み物を貼り付け、さらに編み目をイメージした描写を加えることで、色と形の配置をより強調した。
また、手仕事によって生まれる編地は、画面に温度や身体性をもたらす働きも担っている。そうした質感によって、風景に抱いた温かな魅力を表現した。

羽生綺里子

担当教員より

今回優秀賞の対象となった羽生綺里子の作品《望遠》と《建設現場》は、どちらも都市でよく見かける街の風景がモティーフとなっている。二つの作品は、構成が異なる二作品であるが、内容をかたちづくる手法やアプローチも異なる上で、それぞれの作品が影響しあって相乗効果を生み出している。《望遠》はビルの上階から俯瞰した眺めではあるが、無機的なビル群が温もりのある表情を湛え、陽の光をも表現している。ここでの手法は、決定した構成と色彩の上に編み物を貼り付けることから始められる。異素材の編み物の物質的な存在感に触発される様に、その周辺はざわめき立つ。編み物を編む行為における連続性と身体感覚は、その後の描画においても編む様に描くことはくり返され、揺らぐリズムは全体を覆い尽くし、貼られた編み物は画面内で同化し、画面との至近距離では描かれたハート型にも見える編目のタッチは、リズミカルにホットな画面を支えている。一見全てが編まれているかの様な錯覚を起こす画面はブロックゲームの様な縦の動きも感じられ、工芸ではない斬新な作品の強度を生み出すことに成功している。もう一点の《建設現場》は、やはり要所に編み物が貼られているが、《望遠》とは異なり、タッチの使用は細部にはあるものの見えたままの光景をシンプルに描き出しており、リズミカルでダイナミックな画面は、強度のある心地良い画面を作り出している。二つの作品を描き切った作者に、今後への期待も込めて敬意を払いたい。

日本画学科教授 間島秀徳