萩田彩里沙

Hagita Arisa

自刻像
Jikokuzou


Iron
H1400 × W1600 × D1600mm

作者より

鏡を見るたび眉間にあるホクロが気になっていた。ナイスな位置にあるにもかかわらず、ここを弄ってくれる人が少なく日々悶々としていた。
ここから広がる一本の鉄紐の空間は全て自分。
自分に囲まれた空間は居心地が良い。
自分が大好き。自分を見て欲しい。

萩田彩里沙

担当教員より

この作品は作者自身の眉間の黒子(ほくろ)を中心として同心円を描くようにつくられている。皺も歯も穿かれた目もすべて均質に表皮で連なり、その印象はまるで未知の生物が自らの棲家を作るような醒めた手業でこの作品はつくられているようだ。何かなじみのあるものではない原理で成り立っている頭。まるで浮遊する頭のかたちをした未確認飛行物体だ。「自刻像」を「自己の何かを自己と切り離して存在させる方法」と言い換えてみると、この作品について腑に落ちるものがあるのではないか。この作品は作者本人の単純な模刻ではないだろう。作者はこれまで目を向けてきたのは虫だ。その中でも特に虫酸が走るような感覚の対象を執拗につくり上げることで、むしろ魅力を感じさせる物体を追求してきたが、この作品では「黒子」という本人しか与り知れない感覚を、制作方法の起点に置いて現実化した。作者はこれまで人間の立場で虫を見てきたのだが、茲に至り虫の立場で人間を切り取ろうとしたのだろうか。

彫刻学科教授 伊藤誠