平瀬未来

Hirase Miki

パラレル・レコード
Parallel record

インスタレーション|プリンター、ロール紙
Installation art|Printer, rolled paper
H2270 × W5430 × D1000mm

作者より

1対のプリンターにtwitter から採取したそれぞれ異なるタイムラインをプリントアウトさせ、一枚の紙を介して1つに集約させています。
生物学の概念で環世界という、生き物はそれぞれ種特有の知覚世界をもち、その主体として行動しているという考え方があります。それは個人にも当てはまることであり、私たちはそれぞれの属する集団や生活などの違いで認識している世界は異なっています。
自分たちの認識している環世界とその外側の世界との表裏一体性をコンセプトとした作品です。

平瀬未来

担当教員より

SNSで意味をなさない語彙を打ち込み、無限に応答される「言葉」の応酬から生まれる形。それは日常的にスマートフォンに触れている人は誰でも思いつくことかもしれない。誰でも知っていることを見つけること。作者は今我々を取り巻く現実とは何かから出発したのだろう。しかしこの作品はSNS 的な環境を単純に作品化したのでも、それを通した作者のメッセージでもない。そこから何かを考えるための「場」を作り出したことがこの作品の重要なところだろう。空間に対して働きかける作品を作り続けてきた作者の別の側面が新たな方向性を生み出すきっかけになっているのだろうか、さらに無駄に高い場所から無駄に長い距離を2つのプリンターからメビウスの帯状に出力することで空間を作り出し、言葉が出力されてくることから始まることを共有する状況をかたちにした。「奇跡は誰にでも1度おきる だがおきたことには誰も気がつかない」という楳図かずお「わたしは真悟」のフレーズが、この作品を前に頭をよぎる。

彫刻学科教授 伊藤誠