済藤玖美

Saito Kumi

和紙とひと
Washi and people

本|越前和紙、洋紙|経本折り
Book | Echizen washi, paper | Accordion fold
H210 × W297mm 46ページ

映像
Video | 8min 35sec
8分35秒

作者より

和紙の魅力をあたたかみや風合いだと思っていた。これらの魅力は、目には映しづらいものであり、抽象的で不確かなものではないか、とも思っていた。和紙の魅力を自分以外の誰かに伝えたいのにうまく伝えることができなかった。それから私は、出身地でもあり、越前和紙の産地でもある福井県に向かった。職人やものづくりに携わる方たちに取材を行った。私はそこで、「ひと」という存在に意識が向いた。和紙の魅力は「ひと」という存在によって生み出されているのではないか、と考えたのだった。自分の目と耳と足を使い、和紙のことを知り、そして伝える。
展示では、「読む、見る、触る」という多方向から鑑賞者にアプローチを行い、和紙の魅力を伝えることを目指した。和紙やものづくりに対する興味・関心を持つきっかけの場となることを願っている。

済藤玖美

担当教員より

「和紙」に対する自らの情熱と関心がどこから湧き上がるのかを探るため、作者は何度も産地に訪れた。自分の目で見ること、原料の採集から紙漉きまでの体験を通して感じること、そして職人や和紙文化の普及を担う人物との対話を繰り返すなかで、自分が伝えるべき主題を見つけた。愚直なまでに現場へ足を運んで得たことは、作者が感じた「温かい」和紙の魅力とともに、「人のつながり」を表現した経本折りの本としてまとめられ、作者にしか伝えられない成果を評価した。

芸術文化学科教授 西中賢