神林佳奈

Kambayashi Kana

風景の記憶
memory of scenery

小松石
Komatsu stone
H800 × W500 × D900mm

作者より

時々自然と心惹かれる風景に出会うことがある。大概それは静かで穏やかなものだ。
石に触れて覚える感覚はそれに近い。石に触れると、思い出す景色がある。
他者にとっても石がそんな存在としてあってくれるなら、何か心穏やかになるものを想起させるような存在でいてくれるなら本望である。

神林佳奈

担当教員より

階段状に積み上がり、扁平な壁と一体となる形。もう一つは、小さくはなれて、押しひらかれた形。やわらかみのある安山岩(本小松石)と硬質な花崗岩(御影石)が、シンプルなフォルムをかたちづくっている。いずれの作品も、なめらかに歪んだ面と、軽快に揺らぐ輪郭が、稜線を堅牢に愛おしんでいる。
そこには、特別な眼差しが見いだした普遍的な生命が宿っている。いつも新しく再生するかたちの力がある。前に見ていたものに初めて出会うような、知らなかったのに懐かしさを感じさせる階調を響かせている。原初的な気韻。私のなかの無数の魂が、私たちの唯一の宇宙と、一致している。

彫刻学科教授 黒川弘毅