國保彩夏

Kokubo Ayaka

クオリアの怪物
A monster of qualia


Camphor tree
H2750 × W2500 × D3600mm

作者より

身体と精神の相互作用について考えた時、神経細胞のことを思った。
この怪物のような存在も、おそらくふたつのつなぎを円滑に行うために、神経細胞が見せたのだろう。
たえず対話を繰り返し、微々たるうごきも見逃さないように。

國保彩夏

担当教員より

國保は本作において、自身の中の或る「感じ」が立ち上がった際の、そのサイズや質量、表面を可能な限りリテラルに記述しようとした。かつてのシュールレアリスムの自動筆記にも似た手つきでありながらそれと本作を分かつものは、その探求の為に國保が選択した手法が木彫であったことだ。木片をつなぎ、湿度や重力と契約を交わしながら現実空間に形を起こす。その慎重な作業の果てに出現した彫刻にはドローイング的な疾走感とモニュメンタルな重量感が共存する。相反する感覚がどちらを侵すことなく留まっている―その状態を記す為に國保は木彫を選択した。
「速そうで速くない。動けないほどに」この怪物を形容するならこんな感じか。

彫刻学科准教授 冨井大裕