前澤尚佳

Maezawa Naoka

他律する建築
An architecture which follows surroundings

紙、木棒、モデリングペースト、ほか
Paper, wood stick, modeling paste, other
H700 × W2420 × D910mm

作者より

幼い頃に、長野の祖父母の家で過ごした記憶が強く印象に残っている。暖房や冷房がなく、夏は家中の戸を開け放ち風を求めて暮らすこと、冬はストーブのある部屋に集まり廊下や隣室を仕切る戸を全て閉じ狭い空間で過ごすこと。季節や環境によってその都度建築や暮らしが受動的に変化していく生活は、不便なことはあっても、それ以上に美しい情景や豊かな体験を記憶させたように思う。
環境に合わせて形や使い方が変容する建築、その場所固有の要素を抽出して作られた建築、そしてそれによって得られる愛おしい情景を、私の身体や気づきのようなものを積み重ねて制作できないかと考えた。

前澤尚佳

担当教員より

現代の外部との関係を断絶した建築に対する疑問から、敷地に対して受動的な建築によって得られる体験や情景を大切にできる他律する建築の提案である。作者が生まれ育った長野を敷地とし、自分の体験と記憶を基に夏や冬における具体的な提案の集積が生活に反映されていることにとても好感が持てる。期間限定の農業体験用のレジデンスという設定によって、この土地本来の暮らしや風土を強調した構成がこの提案を秀逸な作品としている。

建築学科教授 布施茂