森本麻楠

Morimoto Mana

奇食図
Kishokuzu

FRP、木
FRP, wood
H1400 × W2750 × D300mm

作者より

仏教の幼稚園に通っていた頃に聞いた「天国と地獄の長い箸」という話をモチーフに制作しました。
死んでからも食べ物に苦しめられることもあれば幸せにもなれる、人間の食べ物に対しての強い執着がトラウマとして記憶に残りました。
この像達は幼少期のトラウマの像です。

森本麻楠

担当教員より

ここは天国だろうか地獄だろうか。
赤い木綿の糸で結ばれて浮遊している、天平彫刻を思わせるこの造形は、仏教説話の「天国」を一見忠実に再現している。ところがそのように見えないところがこの作品の真骨頂だろう。異なる皮膚をしたもう一人のメタリックに彩られた唇に異常に長い箸で食べさせているこの距離感。相手を見つめる眼差し。そして赤い紐で縛られ吊るされているのに気づくのだ。この一見穏やかな造形性は、相反する感情を喚起させ、判断を文字通りの宙吊りにさせてしまう場を出現させた。

彫刻学科教授 伊藤誠