菊沢天太

KIKUSAWA Tenta

愛それ
Aisore

映像|64分56秒
Movie | 64min 56sec

作者より

団地に住む若者たちの群像劇。彼らは将来を案じたり気を紛らわしたりして、日々目的のない彷徨を続ける。そんな彼らはある日、いつか来る絶対的な離散へと向かっていく・・・。2019年の台風19号や、コロナウイルス、五輪延期などの現実的事象にぶつかる彼らは、まさしく当時を生きていた若者たちの姿なのである。台風が過ぎて春を迎えた彼らは、それぞれ別の道を歩み出す。

菊沢天太

担当教員より

菊沢がここで採った方法は、連続している全体、あるいは、個々に独立している群体を解体して、統合するのが困難な状態を敢えて設定し、更に全体に向けて再構築することである。この解体=構築を繰り返していくと、異なるシーンのカットが応答しはじめる。映画『愛それ』の60分の中で、15人以上の人物と年をまたいだ時間を描くには、この方法しかなかったであろう。
菊沢は全体性を目指すことを第一義としながらも、この映画が成立しているのは、「困難な全体」に向かう意志であり、手法も要素もまるで異なるゴダールと接近するのも、この意志においてである。

映像学科教授 板屋緑