馬場梨里花

BABA Ririka

誰かのいないをしている
No one is looking at me

高知麻紙、岩絵具、水干絵具
H2300 × W1620mm

作者より

常に私のいる世界で、私のいない景色を見ている。認識したものすべてが静止画に変わって今と記憶を形づくっていく。

馬場梨里花

担当教員より

裸の人物を中心としてあらゆる角度からの街中や彼女の身の回りの器物や出来事を丁寧に描きこんでいる。人間は、日々の生活の中で五感を通して伝わる情報によって生かされている。それはときに心臓であり肺であり胃でもあり、この内臓器官の各々の役割と同じく様々な情報もまた人間が生きる上での役割を持つ。血液の流れにも似た思考が巡り、焦点の合わない虚な瞳。その先には作者の生きる現代社会をあたかも悟ったように見据えているようで、淡々とした生にかろうじて均衡を保ちつつ危うく生きる現代の人間像が実に生々しくこの作品には見て取れるのである。

日本画学科教授 岩田壮平