成田大喜

NARITA Haruki

情けない男
a man

インスタレーション|金属、プラスチック、木材、廃材
サイズ可変[公演時間|7分14秒]

作者より

2089年、突如現れた巨大異生物「巨夢」によって廃れてしまった世界では人間は生きる希望を失い、微かな望みは国家公認のヒーローに託されていた。かつて国民的ヒーローだったジョーマンこと成田常はある記事をきっかけに人々から追放されてしまう。人里を離れ廃材をかき集めてなんとか自分一人の空間を作り、格安の自動学習型人工知能(AI)と共に生活している。その暮らしぶりはなんとも情けなく、愚かで、落ちぶれていた。
少年ジャンプやアメコミのヒーローが理想なのであればこれがリアルなのかもしれない。彼を私たちはどう見るか。哀れみか、悲しみか、それとも共感に似た羞恥か。
そんな男の日常を切り取ったワンシーンである。

成田大喜

担当教員より

この作品が生まれるまでは紆余曲折があった。試行錯誤の間に何が今必要なのか、何を表現したいのか、あるいはすべきなのか。ゼミでは毎週意見を交わした。熟慮の上に創作されたのが「未来」だった。この情けないと題された作品を賞するのは、今、この作品が受け入れられている証であり、少なくとも何を表現すべきか、という問いには答えられている。何を表現したいのか、は未だ成田氏の中で進行中なのではないだろうか。また次の作品を期待せずにいられない。

基礎デザイン学科教授 菱川勢一