蒋昊

JIANG Hao

へその緒
umbilical cord

インスタレーション|紙、樹脂、ガラス、CTスキャン、レーザーカット、3Dプリント、型吹きガラス
H300 × W800 × D700mm、H400 × W700 × D600mm、H100 × W800 × D700mm、H300 × W500 × D600mm

作者より

私たちの身の回りにあるモノたちには様々な製造方法がある。何かを作る過程で、支持体の残骸や注入の痕跡など、製造方法によって必然的に本体に付着して残ってしまう部分がある。例えば印刷物のトリムマーク、3Dプリンターのサポート材、プラモデルのランナーなど、それらはモノの製造プロセスにおいては重要な役割を果たしていたが、本体ができあがる際に取り除かれるべきものでもある。へその緒と類似しているのではないか。胎児はへその緒を介して母側から酸素や栄養分を受け取り、老廃物を母体に渡す。生まれた後へその緒を切り離し、その跡がへそとして形成される。
最終的に廃材になるものたちにはそれぞれの生成の魅力を感じる。その魅力を引き出すことで、突発的に新たな価値が生まれるかもしれない。
この作品はプロダクツたちの「へその緒」のようなものに焦点を当て、それらをプロダクト生成における生成のメタファとして、胎児を暗示するものとして捉えてみる試みである。
印刷や製本の作業によって、断裁ズレの許容範囲を表すトリムマーク、インキ色の管理マークの色玉、「ハリ、クワエ」を指示する目印など、色々なマークがついている印刷物の「中間生成物」があり、その紙の塊から出てきた胎児。3Dプリンターによって造形を安定させるためのラフト、また造形が崩れ落ちてしまわないように支える部分のサポートが付着している3Dプリントされた胎児。身体がパーツに分解されているプラモデルのキットで組み立てた胎児。吹きガラスによって、ガラスを吹き竿から切り離した時に残った跡がついている胎児。これらのオブジェクトは、プロダクトの製造過程に、生命と同期する、生成の魅力を見立てていく試みでもある。

蒋昊

担当教員より

ものを生産する時にできる夾雑物にショウ・コウは着目した。印刷物の裁断の際に出る「トンボ」や色玉のついた「やれ」、3Dプリンターの出力の際に必然的にできる「サポート」、プラスチックモデルの製造における「ランナー」等を取り上げ、これをモノの生成時にできる「へその緒」に見たて、テーマとした。具体的には人間の胎児を生産物として措定した。紙の積層が地層のように重なる中で、胎児の身体のポジに対する「ネガ」としての「やれ」の堆積が見事な造形をなし、3Dプリンターのサポートが胎児と融合してまさに有機的な臍の緒のように見える。この見立ての視点とそれを形に集約する制作の精度が素晴らしい。

基礎デザイン学科教授 原研哉