保科千晶

HOSHINA Chiaki

言葉を覗く
Looking into the words

インスタレーション|エポキシ樹脂、インスタントレタリング
サイズ可変

作者より

「やばい」とはどんな言葉だろうか。日常の中で、自分の感情を瞬時に言葉に結びつけることは容易くない。そんな時、「やばい」という言葉が口に出る。「やばい」はある種、気持ちの置き場のようなものなのかもしれない。このオブジェの中から透けて見えるのは、あるとき上手く言い表すことができず、「やばい」に置き換わった感情たちだ。混沌とした感情と言葉の世界であるこのオブジェから、どんなやばいが見えてくるだろうか。

保科千晶

担当教員より

「やばい」の頻発は語彙の貧困に由来するものと捉えられがちであるが、保科千晶はここに疑問を持った。多くの感情を集約した「やばい」に含まれる微妙な感情のニュアンスを、多数の言葉の束として分類し、自身が感じる多様な「やばい」に対応させた。分類された言葉を、透明の樹脂の塊の中に配置し、手のひらに収まるほどの非対称の多角形として表現した。一部が曇りとなり、一部が透明性を持つ立体の中に、まるで浮遊するように配された言葉の群は、それぞれ異なる心象風景に対応しており「やばい」に含まれる感情の機微が、見事に物体として定着されている。

基礎デザイン学科教授 原研哉