音に誘われ
雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、鉛筆H2240 × W1940mm
23年間、玉川上水を通ってきた。 ごおごお、ざあざあと響く川や木々が光に包まれ、美しい風景をいつも届けてくれる。 土、草の匂いが鼻をかすめ、心を癒やしてくれる。 自分がどんなに遠いところに行っても、いつまでも忘れることはないだろう。 吉澤美枝子
今の玉川上水は切り立つ深い水路の底を浅く流れが見えるほどであるが、且つての玉川上水は今よりも水量が多く、水路というよりは深くて暗い川の様であったと聞く。 そんな玉川上水の傍らの路を多くのムサビ生が毎日行き交う。吉澤美枝子もまたそのうちの一人であるが、吉澤は玉川上水付近で生まれ育ったので皆よりも更に玉川上水への馴染みが深い。 人生に時折起こるハプニングは人の一生をドラマティックにするが、その合間には何気に繋ぐ日常の光景がある。毎日の習慣は=生活であり、その生活の積み重ねが即ち人の一生である。 吉澤は自らのそんな日常の何気ない光景を題材に卒業制作を描いた。 今を生かされていることの大切さを確認する様に、見慣れた光景を一筆一筆、景色の細部に至るまで音に聴き、掬い取り、執拗に真面目に在るが儘に捉えてゆく。改めて顧みる日常に、愛おしさや刹那さや些かの狂気が画面へと籠る。 単純な様で単純ではない、それぞれの人の人生があることを、吉澤美枝子の何気ない自らの日常の光景を主題とした作品から想わせられ実に感慨深い。 日本画学科教授 岩田壮平
作者より
23年間、玉川上水を通ってきた。
ごおごお、ざあざあと響く川や木々が光に包まれ、美しい風景をいつも届けてくれる。
土、草の匂いが鼻をかすめ、心を癒やしてくれる。
自分がどんなに遠いところに行っても、いつまでも忘れることはないだろう。
吉澤美枝子
担当教員より
今の玉川上水は切り立つ深い水路の底を浅く流れが見えるほどであるが、且つての玉川上水は今よりも水量が多く、水路というよりは深くて暗い川の様であったと聞く。
そんな玉川上水の傍らの路を多くのムサビ生が毎日行き交う。吉澤美枝子もまたそのうちの一人であるが、吉澤は玉川上水付近で生まれ育ったので皆よりも更に玉川上水への馴染みが深い。
人生に時折起こるハプニングは人の一生をドラマティックにするが、その合間には何気に繋ぐ日常の光景がある。毎日の習慣は=生活であり、その生活の積み重ねが即ち人の一生である。
吉澤は自らのそんな日常の何気ない光景を題材に卒業制作を描いた。
今を生かされていることの大切さを確認する様に、見慣れた光景を一筆一筆、景色の細部に至るまで音に聴き、掬い取り、執拗に真面目に在るが儘に捉えてゆく。改めて顧みる日常に、愛おしさや刹那さや些かの狂気が画面へと籠る。
単純な様で単純ではない、それぞれの人の人生があることを、吉澤美枝子の何気ない自らの日常の光景を主題とした作品から想わせられ実に感慨深い。
日本画学科教授 岩田壮平