洞澤侑奈

HORASAWA Yuuna

風景の中のわたしたち
in a memory of landscape

紙、発泡パネルマット紙
本|H320 × W440mm
パネル|H630 × W900mm

作者より

私たちが過ごす日々の営みは、あまりにも当たり前のものとして生活に溶け込んでいる。朝の通学路で見かけた人々の姿、昼下がりの眠気、帰宅時にふと感じる夕食の匂い。そうした光景は誰もが経験したことのある日常の記憶だ。しかし、気づけば日々の忙しさの中で私たちの頭からこぼれ落ちていく。
街中の塀や団地の壁などあらゆる場所にはかつてそこにいた人々の特別ではない、ささやかな毎日の記憶が刻まれている。それらの場所は、通り過ぎていった無数の人々の暮らしや感情を記憶として抱えてくれているのではないだろうか。

洞澤侑奈

担当教員より

通学路に弾む小学生たちの声、八百屋の呼び込み、工事現場に漂うひとときの静けさ、団地の窓からこぼれるゲーム音、キャンパスの講義室で教授の低い声にまどろむ学生――平凡な日常の気配をすくい集めた絵本三部作。風景写真に挿入された人物のイラストレーションは簡潔である。ストーリーがあるわけでもなく、表現に新しい試みがあるわけでもない。しかしながら、そこに流れる時間は、なんと豊かな「ささやかさ」に満ちていることか。美大生の画力が余すところなく息づき、絵本を閉じたとき、微笑む自分が静かにそこに佇んでいる。

基礎デザイン学科教授 板東孝明