谷口智美

Taniguchi Tomomi

毎日、目の前で、つなげてゆく
Everyday, I tie them up, in front of my eyes

インスタレーション|粘土、板、布、ピアノ線、手ぐす、雁皮紙、顔料
Installation art|Clay, board, cloth, piano wire, nylon line, ganpishi, pigment

作者より

私は今、自分のいた場所を見ている。元いた場所は空洞になっていて、私がまわりにつくった粘土の膜だけが残って、目に見えている。今は見え無い、私と粘土が触れ合った時間も、確かに在る。
頭を下げると、そこには見える限りの自分のからだと皮膚が見える。その内側では、様々なことが私の見えないところで確かに起きている。
そんなこととは関係無いかのように、出て来たものは私の目の前に、今、在る。その唐突に出来るきょりに、目に飛び込んでくる物質の強さや重々しさに置いて行かれそうになりながらも、私は乾く前の粘土の柔らかさを思い出す。目の前に見えることと、私が肌を通して確かに覚えている感覚を、今は信じていたいと思う。

谷口智美

担当教員より

谷口さんは自分の身体の皮膚の状態に興味を持ち、制作のなかで、その構造すなわち内容物を覆っている境界の在り方について考えてきた。皮膚の表面を観察し記録するということを制作の一つの流れとし、さらに卒業制作では、皮膚─外界から自分の存在を保護する境界物─という概念を自己の身体性を生かした独自の方法で作品化した。このユニークで冒険的な視点によって新鮮でリアリティのある造形物を生み出すことができた。作品の在り方にこれまでとは異なる考え方や新しい肌触りをもたらすものと評価された。

油絵学科教授 赤塚祐二