大石麻紀子

Oishi Makiko

キミのスレスレ
The Crisis of Yolk

映像|2分30秒
Movie|2min 30sec


Book
H210 × W297mm

作者より

黄身は薄い皮膜の内側にオレンジ色の粘液を内包している。傷つきやすく繊細で、普段は白身と殻によって守られている。制作を通して、黄身はある時は高所から落とされ、ある時はアクリル板で押さえつけられ、またある時は糸によって吊るされた。外界からの刺激に健気に耐える姿は、世界の軋轢に耐える人間と重なって見える。黄身は「私」のメタファーであり、それは誰もが身体という殻の内側に内包する無力で繊細な心の姿である。

大石麻紀子

担当教員より

卵の「黄身」を人間の身体のメタファとして用い、環境へのアフォーダブルな視点を喚起する作品である。黄身は柔らかく可変性に富んだ物体である。粘性の高い液体が薄く強靭な皮膜で覆われている。これを斜面から滑らせたり、落としたり、四角い箱に収めたり、糸をくぐらせて持ち上げたり、平面を押し付けたりと、多様な圧力やストレスを加えてみせる。それに応え適応していく黄身の姿に、宇宙の摂理の中で生を繋いで生る人間の健気な存在を写し出している。キミは「黄身」であるとともに「君」でもあるのだ。

基礎デザイン学科教授 原研哉