齊藤大介

Saito Daisuke

キネティック・ポエトリー
Kinetic Poetry

映像|ディスプレイ|12分15秒
Movie|Display monitor|12min 15sec

作者より

じっくりと向き合いたい。人間の複雑さについて。
自分のことを解らなくなることがある。他人のことを解らなくなることがある。
昨日まで気にもしなかったことに悩まされる。ある人のふとした言動がいつまでも忘れられない。
喜びも悲しみも、決意も葛藤も、 本音も建前も、誠実も欺瞞も。そして希望も絶望も。
目まぐるしく移り変わる感情や人間関係の中で私たちが忘れてしまったこと。
混沌を抱えたまま生きたっていい。秩序に逆らえず流されたっていい。
これは、私たちの大いなる難解さを肯定し、礼讃するために生まれた。

齊藤大介

担当教員より

作者は精緻の極みである小さな歯車や部品が、薄い隙間にぎっしりと集積している時計に魅了され、その運動にそそられるという。そのような構造を、文字でできている「小説」の再現に運用してみせている。ここでは村上春樹訳のスコット・フィッツジェラルド『華麗なるギャツビー』の一節を、バラバラに解体された文字の集積として丁寧に制御しながら、あたかも精密機械にように、テキストが生成、変化、解体していく様を、キネティックに描いて見せている。

基礎デザイン学科教授 原研哉