片山初音

Katayama Hatsune

インスタレーション|木
Installation art | Wood
H70 × W9300 × D9300mm

作者より

この作品は一種の身体的な違和感を作り出しています。この床の上に人が立つという行為は自分が思っているほど能動的なことではないかもしれません。床が少し高い、それだけのことで変わってしまう程には日常の状態に慣れているのです。その状態を作っているのも人であり、自分はそこに立っている。それは誤差のような差異によって緩やかに崩されてしまう。強固に信じているものも、あっさりと緩やかに崩れてしまうものかもしれません。

片山初音

担当教員より

卒業制作展で片山初音は白澤はるか*と2人で1つの展示場所をシェアしていた。しかしその会場に入ると目の前にあるのは白澤の作品だけであり、鑑賞すべき片山の作品は存在してはいなかった。何故なら彼女は、いつもはアトリエとして使用する展示会場の床を、数センチ高く底上げするということを作品としたからである。
私たちは普段、自分の意思で価値を決定しているように思える。しかし彼女はそこに疑問を投げかけた。本当に私たちは自身の意思によって価値をかたちづくり、物事を判断しているのだろうか。実際は、その場の雰囲気や状況によって価値観は揺らぎ受動的になってはいまいか。彼女がさりげなく少しだけ上げた床は同型の隣あう展示空間とは明らかに空気の流れが異なっていた。それは作品を鑑賞するということは単に視覚的なことではなく、身体全体の感覚によってもたらされることである、ということを静かに物語っていた。

*少なからず白澤はるかが片山の意図を深く理解し、自身の作品を制作したことは、今回の片山作品の魅力を助長させたことを、ここに記して置きたい。

油絵学科教授 丸山直文