佐川みなみ

Sagawa Minami

Utopia_be in

油絵具、アルキド樹脂絵具、キャンバス
Oil paint, alkyd resin paint, canvas
H2100 × W2400mm

Utopia_past

油絵具、アルキド樹脂絵具、キャンバス
Oil paint, alkyd resin paint, canvas
H1800 × W2000mm

Utopia_memory

油絵具、アルキド樹脂絵具、キャンバス
Oil paint, alkyd resin paint, canvas
H1300 × W1500mm

作者より

「自分の理想の世界」について考えながら制作しました。

めまぐるしい日常の中でふと疲れてしまった時も、心の中にこんな世界を持ち続けられていたら自分はまだ大丈夫だと思えます。
画面全体に愛情を持って、一番似合う色を探しながら絵具を積み重ねました。

佐川みなみ

担当教員より

画面の中央上部に小さい島が描かれている。島の周りは青い色面で、一見フラットに塗られているように見えるが、海と島の位置や距離を確かめるように、丁寧に絵具を塗り重ねて描かれている。島にはベンチが置かれていて、外灯もある。それらは風景に溶け込むように淡く描かれていて、バス停や線路が描かれている絵もある。海の上にバスや電車など走っているはずがないと思いながらも、観ていると次第に、走っているかも知れないと思えてくる。ふと自分が海に浮かんでいるような感覚になる。
3年生の頃から「海に浮かぶ島」をモチーフに絵を描いてきた佐川にとって、島とは「周りに干渉されず、かといって孤独ではない理想の世界」であり「自身を保つための心のゆとり」のようなものでもあるという。バスや電車は、他者との距離を測りながらも繋がっていたいという思いのメタファーであり、島のイメージは心のどこかに常に漠然とした不安を抱えているからこそ拠り所とする世界ではないだろうか。
「ゆったり」や「おおらか」といった言葉が浮かんでくる佐川の絵に心地よさを感じるのは、絵から彼女の思いがひしひしと伝わってきて、同時代を生きる者としてその思いに共鳴するからなのだと思う。

油絵学科教授 小林孝亘