川鍋理沙

Kawanabe Lisa

nada
none

キャンバス、油絵具
Canvas, oil paint
H1940 × W2590mm

barco
boat

キャンバス、油絵具
Canvas, oil paint
H1620 × W1300mm

作者より

とめどなく肥大化していく生の中には、
底のない空洞 不在 さみしさがある。
生きものたちの真皮に触れたい 騒々しさや欲や混沌の中にある
その空洞 聖なるものに触れたいと思い
聖 生 性 すべてが絡みあって循環する様を描いた。

川鍋理沙

担当教員より

色鮮やかな植物群、絡み合う有機的な肉塊、私にはそれらが異界にひっそり咲く花や蠢く生き物、そこに垣間見える青空のように見え、その異様な画面に充分魅力を感じている。しかしながら何故だか地に足がつかない、現実離れした浮遊感にも同時に襲われるのである。果たして川鍋はそのような、我々には見えない異界を想ってこの作品を描いたのだろうかと。学生時代の川鍋は休暇を利用して何度かメキシコを旅している。そこで出会った貧しい人々や露天商にある珍しい野菜、もしくはそれらが集まる大きな広場などを重ねて描いていたことからすると、その旅は彼女に、生生しさとは何か、新しいもの、誠実なものとは何かを問いかける貴重な旅だったのだと思う。
卒業制作であるこの大作はそれらの集大成であり、その旅で感じた内容は抽象化され、ドラマチックな構成に圧倒的な筆力を感じるのだが、一方で私にはそれらが不気味な世界への憧憬のように見えるのも否めないと思っている。言い換えれば何か川鍋自身が掬いあげた、人間の営みから滲み出た実感のようなものをもっと感じたいと思ってしまうのだ。
これからしばらく川鍋はメキシコで暮らすと聞いている。それは彼女が本当の自分に出会う大切な機会になるだろう、私は異国で生活する川鍋の作品に更なる大きな期待を寄せている。

油絵学科教授 水上泰財