北村あずさ

KITAMURA Azusa

造形表現活動が⾃律性・⾃⼰認知⼒に与える影響について
― ⾃⼰エスノグラフィーによる洞察 ―

論文|55ページ 51,607字

作者より

つくる人たち、表現する人たちへの尊敬と憧れがあった。
どのように発想を膨らまし、場面を切り取り、造形物に落とし込んでいるのか。
独自のビジョンや考えを示すことに一般社会の多くの大人達が苦手意識を持っているように感じていた。その一人である筆者が、ファインアートを専攻する美大生と共に課題制作を体験し、制作過程の心身の動きを記録し、洞察を行なった。
今自分が何に関心があり、どのように見ているのか、それが自ずと造形物に現れる。造形表現活動を行うことが、自己を認識し、自分がいいと思うことを選ぶ訓練になるのではないか。現代人の心の健康や豊かさの向上にも役立つかもしれないと期待を込めて書き綴った論文である。

北村あずさ

担当教員より

社会のコマとなってロボットのように働く普通の社会人が、6週間の美術⼤学の実習で得た経験をもとに⾃⼰エスノグラフィーという形で調査分析し、ウェルビーイングにつながる自己決定と⾃律性について検証した。結果、造形が⾃律性を鍛える一つの方法であることが導かれ、造ることの目的が拡張されたと言えるだろう。石彫は美大生の中でも限られた人しか経験しない実習。それを初の体験としたこの研究の貴重性も強調しておく。

映像学科教授 篠原規行