伊賀さな

IGA Sana

LAYER OF LINES

紙、ベニヤ板、木版用水性絵具、スプレー|ステンシル、シルクスクリーン
Paper, plywood, watercolor paint, spray | Stencil, silkscreen painting
H800 × W3100 × D3100mm、H700 × W900mm(3点)
本|H35 × W340 × D460mm(152ページ)

作者より

誰しもが引くことができる線。私の線は一体どのようなものなのか、追求するために線をかきつづけてきた。その中で、絶え間なく動き続ける水の形に興味を示し、一瞬の形状を線として捉えることにした。線をかく上での意向知行を言語化しながら自分自身の線への理解を深めていった。その中で私は水面の“影”を線で追っていることに気づく。理性的な水の構造を理解したうえでかく線と、身体的な自分自身から生み出された瞬間をかく線を目指すことで自分の線が生まれ始めた。最終的に物理的に水面を線として表現する方法を模索した。私の線はここで終わりを迎えるのではなく、一生向き合っていくだろう。

伊賀さな

担当教員より

線描——伊賀はこの最も単純で、けれども最も奥の深い世界を一年間を通じて体現し続けた。テーマは「水面」。道具は、クレヨンに始まりマーカー、そしてステンシル技法のシルクスクリーンへと移り変わった。身体の軌道として、そして見たものを表現するために伊賀の試行錯誤は繰り返された。対象となる「水面」とは何か、水面の形とは。伊賀は幾度も川や湖を訪れ一日中水面を見続けドローイングをした。「水面」は影だ——伊賀のこの発見は彼女の線描を飛躍的に進化させた。しかしそこからが伊賀にとっての本番だった。線を描くために自らの内(理)と外(身体)を行き来することの意味。どこに、何に、重心を置くのか、その中で揺れ動く自身の存在とは。ここに印された水面は伊賀自身の軌跡である。そしてこの先へ歩むための宣言書でもある。

視覚伝達デザイン学科教授 白井敬尚