種村すぎ菜

TANEMURA Sugina

円環と流転 ―日本的時間の探求―
Circle and Flow – the Pursuit of Japanese Time –

本|紙
Book | Paper
H286 × W200mm(500ページ)、H286 × W200mm(120ページ) ×2点
パネル|H286 × W20mm ×22点、H594 × W420mm

作者より

日本に流れる時の美しさの正体に迫りたい。
私は高校から茶道を続け、日本の文化と思想に魅了されてきた。季節の風物詩をかたどる茶席菓子や日本古来の天文暦術、哲学的な時間論など、多様な視点から日本に流れる時を探求し「円環と流転」という自分なりの答えを導いた。
時は、生命溢れる有機体だ。一人ひとりから「今」泉のように湧きあがって輪のように広がり、生きているからこそ、とめどもなく変化する。それは、日本の四季のうつろいに通じる。
この一年、私が旅してきた日本的な時間観念を『数字のない暦』をはじめとする、3冊の書物に編んだ。本のページをめくることと、時を過ごすことは似ている。日本人が育んできた豊かな時間を、この書物から少しでも感じていただければ嬉しい。

種村すぎ菜

担当教員より

幼い頃から自然に対して鋭い感受性を持っていた彼女は、時間とは無味乾燥な数字による分割ではなく、私たちが全身で受け止める環境の変化への豊かな感性にこそその本質があると直感し、それを三冊の書物によって描き出すことを試みた。一つは伝統和菓子と和漢三才図絵と日本の二十四節気七十二候によって構成された数字のない暦本。日本の暦の成立を一次資料を探索しながら調査した歴史編。ベルクソンや西田幾多郎などを介した時間哲学編である。取材、調査、編集、デザイン全てにおいて突出した力が発揮された美しい書物によって、彼女独自の時間論「円環と流転」が浮かび上がる。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策