濵田汐音

作者より

「色彩の主観的な美」とは一般的な色彩調和ではなく、私自身が感じる色彩の美しさを指している。この作品はその美しさの要因を探る為の一連のスタディの記録である。
4つの章に分かれたスタディでは最終的に視覚混合（または光学的混色）が色彩の美の要因であると仮定し、その実験的作品として小作品60点と主観的な美を表現した作品6点を制作した。

濵田汐音

担当教員より

「美しい色彩とは何か」彼女はこの永遠の課題に真正面から向き合った。自分が美しいと思う配色を見つけるため対象の抽出再現、配置、色面との距離による見えの変化実験などを地道に行ったが、あえて先行する色彩理論に頼らずあくまでも自分の感覚に基いたプロセスが素晴らしい。その上で改めてイッテンやアルバースによる理論と自分の経験とを比較し、自分が美しいと感じる色は色面配色ではなく筆のカスレや微妙な重なりがもたらす網膜上の現象だと確信し最終的に6点の連作を制作した。自らの感覚を信じ粘り強い作業によって到達した彼女の色彩論はとても説得的である。

視覚伝達デザイン学科教授　寺山祐策