石塚詩織

ISHIZUKA Shiori

おじいさん —ちいさなたび—
The Old Raccoon

絵本|紙、鉛筆
H241 × W210mm(24ページ)

作者より

身近に広がる自然や生きものたちの面白さに気づき、それらを題材にした絵本を作りたいと思った。都会でも田舎でもない平凡な土地に光をあて、現代の自然の姿を私の視点で描き、読者へと伝えることが本研究の目的である。描かれている風景は、私の地元の埼玉県所沢市をモデルにした。鉛筆画は、空間の表現や細部の描き込みに適しており、リアリティのある描写を可能にした。ありふれた自然に潜む小さな世界を、おじいさんと共に歩いてみてほしい。

石塚詩織

担当教員より

日常は不変なものと思うことが難しくなった近年。改めて周りに視線を落とすと、知らなかった世界が息づいていることに気づく。作者にとって、地元の自然は格好の対象となり、そこでの発見は、老狸の五感を通して世界のありようを伝える絵本となった。新しい住処を探すおじいさんの旅を、語りすぎることなく、鉛筆によって精緻に描かれた画面が頁ごとに視覚を潤す。本を閉じると、変化を受け入れながらも生きようとする意志が、静かに伝わってくるのである。

芸術文化学科教授 米徳信一