鈴木颯良

SUZUKI Sora

屏風の役割と絵画表現の関係性
The Relationship Between The Role of Folding Screens and The Pictorial Expression.

論文|74ページ(52,693字)

<概要>
日本における屏風は、古代から、間仕切りや遮蔽などの機能を持つ室内家具、儀礼の調度品として重宝されてきた。また、曲折する大画面を活かした絵画形式として、日本美術の花形にふさわしい多数の名品を残している。屏風は、実用品と美術品の二つの性格を兼ね備えてきたのである。
先行研究では、その絵画表現に焦点が当てられ、屏風本来の室内家具としての機能や用法には注目されてこなかった。しかし、多様な場で用いられる屏風の本質を捉えるためには、本来の役割と絵画表現の横断的な分析、またその関係性の解明が重要である。そのため、本研究では、屏風を「役割」と「絵画表現」の二つの視点から分析し、時代ごとにその関係性をあきらかにすることを目的とした。
調査の結果、屏風における「役割」と「絵画表現」の関係性は、時代ごとに変化していることがわかった。また、屏風を用いた作品制作を行う現代アーティストへのインタビュー調査から、近代の生活空間の変化によって失われた屏風の役割や機能性が、現代における作品表現に活かされていることがわかった。作品表現の他にも、地域活性化や教育事業においても活用されるケースがあり、屏風がいまだ幅広い可能性を秘めていることが明らかとなった。実用品と美術品の二側面を両立しながら継承されてきた屏風は、今日においても広く芸術文化の発展に寄与している。今後も様々な分野から研究する価値のある芸術品といえるだろう。

作者より

屏風は、日本美術を代表する絵画形式であり、間仕切りや遮蔽などの機能を持った伝統的な室内家具でもある。本研究では、多様な場で用いられる屏風の本質を捉えるために、先行研究で注目されてきた絵画表現だけでなく、室内家具としての機能性や用法にも目を向け、異なる二視点を持って屏風を論じた。また、文献調査の他、現代アーティストへのインタビュー調査を行った結果、屏風には表現だけでなく、地域活性化や教育事業など、様々な可能性が秘められていることがわかった。屏風は今後も多様な視点から研究する価値のある芸術品だといえる。

鈴木颯良

担当教員より

現代ではほとんど美術館でしか目にすることのない「屏風」を、折り畳める支持体に描かれた美術品と、権威の象徴や間仕切りという用途をもった装置という二つの側面から、日本の歴史と重ね合わせ、丁寧に論じた。文献調査だけでなく、屏風を支持体として制作を行う、三人の日本画家にインタビューを行うことで、平面であり、かつ空間に自立する立体でもある屏風が、現代作家の創作の可能性を広げていることを示した点を高く評価したい。

芸術文化学科教授 杉浦幸子