勝永伊紀

KATSUNAGA Inori

EXT. ROOM_EVENING

インスタレーション|液晶ディスプレイ、タブレット、ほか
サイズ可変(音声 15分00秒を含む)

作者より

鏡に指が触れている、鏡のなかで指は触れていない。
新型コロナウイルスの蔓延により、メディアや報道に意識を向けて生活を送るようになった。外界との接触でしか達成されないコミュニケーションを、オンライン上で行うことで達成している“かのように”扱う、メディアやムーブメントに居心地の悪さと疑問を抱いてきた。内外が併存するこの作品は、撮影セットを模している。自身がこれまで表現媒体としてきた映画における、本来とは異なる空間や事象を設定する“仮構”を足掛かりに制作した。

勝永伊紀

担当教員より

孤独を感じさせる、冷たい光を浴びている山や川のような人工的な風景は、夜に向かっている。野外なのか部屋の中なのか漠然とした空間で、観客は曖昧な場所に立っている。カメラによって常に観察され、確認されているが、メディアによって他の人と話せなくなりつつある世界。その距離感は近年、明らかになった事柄だ。この心象空間の中心にある「指」は、鏡の中の像にどう近づいても触れることはなく、その極薄く隔たれた物質・空間によって、他人や自身の存在を認識し直す。これから、どのように行動していくのか。孤独はエネルギーに成りうるのか。

映像学科教授 クリストフ・シャルル