大川原更咲

OKAWAHARA Sarasa

記憶を染める
Dye your memory

ガラス、藍、キャスティング、発泡ガラス
[最小]H100 × W100 × D200mm 〜[最大]H700 × W700 × D300mm(8点)

作者より

ガラスが染まる。時間と共に藍が薄れていく。
ガラスを染めることを通して記憶を可視化し、ガラスに記憶をとどめた。
記憶の儚さ、ガラスの儚さを作品を通して感じてもらいたい。

大川原更咲

担当教員より

作者の実家は染物屋で、自分が生まれ育った環境と、ガラス素材を融合することを考え様々な試作(ガラスを織る、編むなど)を経てガラスを「染める」という発想に至った。

「染める」とは一般的には染料を布に染み込ませて色や模様をつけたりすることである。
普通のガラスはビンや試験管などに液体を貯めることはできるが、染み込ますことはできない。そこで作者は液体が染み込むガラスの開発に取り組み「発泡ガラス」の技法にたどり着く。「発泡ガラス」とは粉状のガラスに重曹(NaHCO3)を混ぜ電気炉の中で加熱する過程で発泡したガラスであり、大小様々な泡が含まれる。この状態で染料につけると、細かく割れた小さな穴を伝って毛細管現象が起き、染料が吸い上げられていった。
このような素材の試行錯誤により「ガラスを染める」技術が開発された。

作品のフォルムは自分の過去における様々な出来事をベースにシンプルな形にまとめられ、その時の感情や思いを藍色で染めていった。時には淡く、時には濃く、藍染が自分の記憶となってガラスを染める。藍色と白が織りなす空間がとても美しいものとなった。

この作品は、ガラス造形の新たな可能性を示すものとして高く評価された。

工芸工業デザイン学科教授 大村俊二