陳冉

作者より

過去と現在が交錯する夜、母親の死に罪悪感を抱いている主人公は、その悲しみに向き合っている。

陳冉

担当教員より

トラウマを抱えた男の苦悩と救い。
主人公は現実と記憶の狭間に閉じ込められている。悲しみの魚を追ってトラウマの牢獄から抜け出した先に救いはあるのだろうか。
３年生まで実写映画とCGを軸に制作を続けてきた作者は、実写映画とは異なるCGアニメーションの表現の特性をよく理解し、作品のコアに取り込んだ。モンタージュではないシームレスなイメージ変化は揺らぐ現実感と時空間の移動を、リアルだが不完全な世界は生きた心地がしない生を、執拗にリプレイされる母の姿は過去の呪縛と苛烈な自責の念を描いている。そして身体は主人公の心に応じて変形する。過去に取り残された人間のリアリティは、決して他者と共有できる世界の中には存在しない。
さらに、本作はVRにも展開している。私たちの身体も取り込む形で、主人公の奈落の苦しみと解放を経験させてくれる映画が完成した。

映像学科専任講師　髙谷智子