佐藤翔子

Sato Shoko

Lucy

鉄、SBRゴム、焼付塗装
Steel, styrene-butadiene rubber, melamine baking type top coating
H230 × W400 × D210mm × 4点

作者より

よく重いものは置けないねと、言われる。「ふざけんな!」と思う。これはそもそも鉄が歪むほど重いものをわざわざ置くための場所ではない。水色は鉄で、緑色はゴムでできている。4つのルーシーは全て同じ形だ。若干の機能とともにゴムの厚みによる曲線はどことなく様になり、置き方を考えればいくつもの形をつくることができる。写真はその中のパターンの1つに過ぎない。

佐藤翔子

担当教員より

物と空間の関係性を探求した上に生まれた、一枚の曲げた鉄板と柔軟なゴムシートの組み合わせによるシンプルな造形である。空間の中に存在する「物」の内側と外側、そしてそこに生まれる境界、非常に難しいテーマを独自の切り口で極めて簡潔に作品表現している。ゴムシートの形状を変形させることにより境界は優雅に変化する。そのフォルムはあくまでも優しく、ユーモラスでもある。家具の形を借りる事により、最小限の機能性を持たせてはいるが、表現しようとするものは、表層的な有様を超えた不可視なものである。終わりがないかのように見えた試行錯誤の末に生まれた、空間の概念に切り込む秀逸な作品である。

工芸工業デザイン学科准教授 山中一宏