平澤尚子

Hirasawa Shoko

2050

廃品蛍光灯、ゲル膜、ガラスパイプ、アルミ線、高周波放電装置、金属、ワイヤー
Fluorescent lamp, crystal gel, glass pipe, aluminium wire, high frequency discharge device, metal, wire
H1200 × W450 × D450mm × 5点

作者より

目に見えない部分に未知なる美しさは存在し、当たり前の概念を問い質すことから未来の創造は始まる。全ての存在する物質や事象がマテリアルとなりうる。

太古の人間が触れた時、月や太陽が光るのと同じように光として美しく、物質として存在できる光を目指した。廃品蛍光灯を高周波放電によって、配線無く光らせることで関係を不明瞭にすると、とたんに光は “光らされているもの” から “光っているもの” となる。高周波放電の性質により、指が触れると光が強くなり、集まる。透明のゲル伸縮膜は感電を防ぐための保護膜であると同時に、暗闇の中で光をほんの少しの動きを持って浮遊させるための支持膜だ。

一連の私の制作の要となったのは、未来の技術がいきつく先の価値観や美意識に対する考察であった。技術発展は一見人間の営みを不自然にしているようで、実は物質に回帰することへの人間の羨望と、純粋な欲求に導かれているのではないかと考える。

平澤尚子

担当教員より

極めて実験的なアプローチと斬新な素材の使い方などが高く評価された。闇の中で宙に浮くリングが放電により発光する様はどこまでも儚く、美しい。絶え間ない光の細かな揺らぎは作者の心のざわめきのようでもある。デザインとして妥協できないポイントを整理し、ディティールの検証、完成度の追求など詰めるべき課題は多い。それら全てが一定のラインを超えた時に表現としての完成度が上がる事だろう。多角的な面から可能性を秘めた作品である。

工芸工業デザイン学科准教授 山中一宏