石川真奎

Ishikawa Masaki

中へ出て外に入る
Go out into the inside, come in outside

インスタレーション|油絵具、ジュート繊維、鉄パイプ、金網フェンス、石、麻紐、糸
Installation art | Oil paint, juto, metal pipe, wire mesh fence, pebble, linen string, sewing thread

作者より

向こう側の世界はとても綺麗です。それは私が見ることでしかそちらを認識できないからですか?
こちら側の世界は少し物足りなくてあっけらかんとしています。それは私の身体がこの場に実在しているからですか?
そちらに行ったらきっと私は後悔するでしょう。振り返って、こちら側を綺麗だと感じるでしょうね。
向こうもこちらもあんまり変わらないのに、なんて私は視覚に振り回されているんでしょうか。

石川真奎

担当教員より

無骨な単管パイプで仕切られた空間を主に構成するのは、モダニズム絵画の常套句と言っていいストライプと色面である。しかしその空間がここまで鑑賞者を混乱させるのは、荒い麻布やそこに擦り付けられたような絵具の異様な物質感だけでなく、つくりながら壊すような倒錯した制作方法によるのだろう。
以前、政治的な問題を直接扱うコンセプチュアルな作品を模索していた作者がつくり出した物質と色彩によるアナーキーな空間、それを読み解くキーになるのは「半透明」という概念である。不完全に仕切られ閉じながら開くような空間、メッシュの麻布の裏に溢れ出した濃厚な絵具など、それらが指し示すのは合理性や言葉に回収されない「半透明」という野性である。ストライプや色面などのモダニズム絵画のエレメントが解体され、「見える/見えない」「内と外」と言った対立要素がエラーや矛盾を呼び込むようにして、血が滴るような呪術的な場をつくり出した。

油絵学科教授 袴田京太朗