士林(林士琳)

SHI LIN(LIN Shilin)

百器夜行
the Night Parade of One Hundred Vases

陶、手捻り、タタラ成形
[最小]H120 × W110 × D110mm〜[最大]H380 × W170 × D140mm(25点)

作者より

夜になると、普段はただの器物が妖怪になって活動し始めるという「百鬼夜行」の伝説がある。見えない世界では、もし器たちに意志があるとしたら、彼らは何をしたがるかな?私の家にはたくさんの花器が棚の上に並んでるんだ。それらの花器を見つめてるとき、彼らは本当に棚に留まりたがってるのかなって思うんだ。もし彼らが足が生えたら、静かに逃げ出して、大切に育てられた花たちを連れて外の世界を探検したいと思うのかな?それとも花たちを家に送り返して、自然の中に戻したいと思うのかな?私は土を手でこねながら、小さな花器が自由に動ける柔軟な体を持っていたらいいなって思ってるんだ。そうすれば、花たちを連れて遠くへ旅立つときにも自由に動ける。

士林(林士琳)

担当教員より

深夜に徘徊する鬼や妖怪の言い伝え「百鬼夜行」の様子を、器という工芸的な手法を使って表現したユニークな作品である。それぞれ異なる形態や装飾技法は、多彩で完成度も高い。この器が単なる造形表現としてではなく、花器としての強い想いが内在することも、作者独自の世界観に繋がっている。
夜に逃げ出す器たちは、人間社会に使われる道具たちの悲哀なのか?作者の文明への皮肉も感じるが、何より、制作を愉しんでいることが嬉しい。

工芸工業デザイン学科教授 西川聡