近藤千尋

Kondo Chihiro

みぞをなぞる
trace a trench

映像
Movie
20min

作者より

この肌と肌が汗すら混ざるほど近くても
私もあなたも1人の人間だから経験が違い、言葉が違い、生まれた場所が違う。
人と人がすべてを解り合うことは到底無理だ。
声に出せば簡単に思ったことを伝えることはできるが
きっとそれは上滑りして、彼らを傷つけるだろう。

この溝にどう触れたら、彼らを少しでも解ってあげられるだろうか。
この抵抗はいつかこの溝を埋められるだろうか。

近藤千尋

担当教員より

映像の画面中央には上半身裸で抱き合う2人がいる。背中を向けて話す人(ゲスト)の言葉に対し、こちらを向いた人(作者本人)は、声を発する代わりに相手の背中にたどたどしく自身の言葉を綴っていく。成立しているのかいないのか、もどかしい「会話」。しかし彼らが語る「自分が経験した嫌だったこと」は、鑑賞者をたじろがせる。「美術高校を受験したいと父親に打ち明けた時に無言で平手打ちされた」と語る中国人の女性、「結婚相手を見つけてずっと日本に住むつもりなのか?」と言葉をかけられた台湾人の男性、封建的な父や祖父母に母親を「犬以下」と罵られた日本人の女性。それらの言葉は、無防備な自分が無防備な誰かに抱きしめられるという、日常を突き破った圧倒的な経験に導かれたものだろう。傷ついた弱者たちの言葉は、民族や性差といった複雑な問題をはらみながら、美しい光に満ちた剥き出しの空間に静かに降り積もる。

油絵学科教授 袴田京太朗